こんにちは、さぼてんです。
今回は福岡県は太宰府に新しくできた太宰府天満宮の仮殿について書いていきます。
太宰府天満宮 仮殿
- 名称:太宰府天満宮仮殿
- 所在地:福岡県太宰府市
- 竣工:2023年5月
- 意匠設計:藤本壮介建築設計事務所
- 構造設計:Arup
- 設備設計:ー
- 施工者:竹中工務店
計画
太宰府天満宮本殿の屋根の葺き替え工事に先立ち、工事中本殿に代わる役割を担う建物として仮殿が計画されました。天満宮のHPでも公開されているように、1125年という節目に約3年間にわたる本殿の改修工事を行うようです。その期間中、本殿で参拝や祈祷などができなくなってしまうことから仮殿を建てたという分けです。「1125」という数字は若干半端なようにも感じますが、太宰府天満宮が祀っている菅原道真公の誕生日が旧暦の6/25、命日が2/25であることから「25」という数字が太宰府天満宮にとって所縁のある数字だそうです。
令和9年(2027)に、道真公が薨去(こうきょ)なされてから1,125年という大きな節目を迎えます。この節目となる式年大祭を前に、令和5年5月より約3年をかけ、124年ぶりに重要文化財「御本殿」の大改修を行います。
https://www.dazaifutenmangu.or.jp/archives/1004
建築計画は藤本壮介氏。数年後に控えた大阪万博のデザイン統括プロデューサーを担うなど最近の活躍に目を見張る建築家です。
建物としては、なんといっても屋根の上に樹木を載せたデザインが特徴的です。半円状の片流れ屋根は伝統的な社寺建築とは一線を画す形状であるものの、上に載っている樹木が天満宮の周りを囲んでいる森と同化していることからか、スペースとして「浮いている」印象はなく、天満宮にうまく溶け込んでいると感じました。私が行ったときはすでに本殿の改修工事(?)が始まっており本殿が仮囲いで覆われていましたが、仮殿の屋根の上に載っている樹木によって本殿がうまく隠されていました。
構造
構造設計はArupが担当しています。Arupは世界的に展開しているエンジニアリング会社で、シドニーのオペラハウスをはじめとした構造設計、日本では新宿のコクーンタワーなどの設計に携わっています。建築雑誌やArupのHPに掲載されている情報から、構造は鉄骨造のようです。また、歴史的な土地ということもあり、計画地は掘削せず、基礎を地面の上においた計画となっています。
平屋建てブレース付きの鉄骨造とし、運搬可能なサイズに分けられたパーツをくみあげ、現場溶接のないボルトのみで接合できるフレームとした
https://www.arup.com/ja-jp/projects/dazaifu-temporary-shrine
埋蔵文化財の関係から敷地内の地面は掘ることができないため、地面の上に鋼板を載せ、コンクリートを打設した置き基礎としました。
https://www.arup.com/ja-jp/projects/dazaifu-temporary-shrine
アクロバティックでチャレンジングな同社の他の実績に比べると、天満宮は比較的落ち着いた印象も受けますが、屋根の上に樹木が載っている建物で、かつその庇がそれなりに跳ね出しているので、構造的にも気にしていることは多いように思います。屋上緑化の中でも、樹木級の重量物を屋根に載せている建物は、同じ福岡では「アクロス福岡 / 日本設計・竹中工務店・エミリオ アンバース」があります。こちらは下部が鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート造、上部は鉄骨構造の建物で、屋根に載せている土壌は50cm程度の軽量人口土壌:アクアソイルが使われています。鉄骨造でかつ庇の跳ね出しも長いこの建物でも同様に軽量土が使われているでしょう。
コメント